【アウトソーシングほっとニュース】外国人雇用実態調査の結果を公表
厚生労働省は、令和5年「外国人雇用実態調査」の結果を取りまとめ、令和6年12月26日に公表しました。この調査は、外国人労働者を雇用する事業所における外国人労働者の雇用形態、賃金などの雇用管理の状況及び当該事業所の外国人労働者の状況、入職経路、前職に関する事項などについて明らかにすることを目的として、今回初めて実施したものです。調査は、雇用保険被保険者5人以上かつ外国人労働者を1人以上雇用している全国の事業所及び当該事業所に雇用されている外国人常用労働者が対象で、調査客体として抽出された9,450事業所のうち有効回答を得た3,534事業所及び11,629人について集計したものとなっています。
調査結果のポイント
■事業所調査より
・外国人労働者数(雇用保険被保険者数5人以上事業所)は約160万人。
・在留資格別にみると「専門的・技術的分野」が35.6%、「身分に基づくもの」が30.9%、「技能実習」が22.8%となっている。
・外国人労働者を雇用する理由(複数回答)では、「労働力不足の解消・緩和のため」が最も高く64.8%、次いで「日本人と同等またはそれ以上の活躍を期待して」が56.8%、「事業所の国際化、多様性の向上を図るため」が18.5%、「日本人にはない知識、技術の活用を期待して」が16.5%となっている。
・外国人労働者の雇用に関する課題(複数回答)をみると、「日本語能力等のためにコミュニケーションが取りにくい」が最も高く44.8%、次いで「在留資格申請等の事務負担が面倒・煩雑」が25.4%、「在留資格によっては在留期間の上限がある」が22.2%、「文化、価値観、生活習慣等の違いによるトラブルがある」が19.6%となっている。
■労働者調査より
・外国人労働者の国籍としては、ベトナムが29.8%と最も多く、次いで中国(香港、マカオ含む)が15.9%、フィリピンが10.0%となっている。
・入職に要した費用(入国までにかかった費用総額)をみると、「20万円以上40万円未満」が23.0%、「20万円未満」が19.2%、「80万円以上100万円未満」が14.3%となっている。
・今の仕事をする上でのトラブルや困ったことについてみると、「なし」が82.5%、「あり」が14.4%。「あり」の者について、そのトラブルの内容(複数回答)をみると、「紹介会社(送出し機関含む)の費用が高かった」が19.6%、「トラブルや困ったことの相談先がわからなかった」が16.0%、「事前の説明以上に高い日本語能力が求められた」が13.6%、「その他」が34.5%となっている。
外国人雇用状況の届出制度
外国人雇用状況届出は、外国人労働者の雇用の安定と改善、そして再就職支援を目的とした制度です。この制度は「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」第28条に基づいており、外国人を雇用するすべての事業主に、外国人の雇入れ・離職時に、氏名、在留資格、在留期間などを確認し、厚生労働大臣(ハローワーク)へ届け出ることを義務付けています。ただし、特別永住者や「外交」「公用」の在留資格を持つ方は届出の対象外です。届出を怠ったり、虚偽の届出を行った場合には、30万円以下の罰金の対象となります。
雇用保険被保険者となる外国人の場合は、雇用保険被保険者資格取得届または雇用保険被保険者資格喪失届を提出することで、外国人雇用状況の届出を行ったこととなります。期限は、雇入れのときは翌月10日まで、離職のときは翌日から起算して10日以内です。一方、雇用保険被保険者とならない外国人の場合は、外国人雇用状況届出書の提出が必要です。期限は、雇入れ、離職ともに翌月末日までです。届出には、ハローワークインターネットサービスの「外国人雇用状況届出システム」が利用できます。
外国人雇用に関するルール等
外国人雇用状況の届出義務のほかにも、外国人が在留資格の範囲内で能力を十分に発揮しながら適正に就労できるよう、事業主が守らなければならないルールや配慮すべき事項があります。遵守すべき法令や努力義務となる雇用管理の内容などを盛り込んだ「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」が定められていますので、この指針に沿って、職場環境の改善に取り組んでください。
また、外国人労働者を雇用する事業主が雇用管理上のポイントを確認するために作成された自主点検表がありますので、ぜひご活用ください。
在留資格制度
最後に、在留資格について触れておきます。在留資格とは、外国人が日本に入国・在留するために必要な資格(許可)のことです。一方、ビザとは、外国人が日本に来る前に、母国にある日本大使館や領事館で取得するもので、正式には査証といいます。在留資格とビザ(査証)は違うものであり、外国人が日本に入国するまでの流れは次の通りとなります。
①外国人本人に代わって雇用先企業の担当者などが、日本の入管に、在留資格の交付申請を行う。
②交付された在留資格認定証明書を外国人本人に送り、外国人本人が母国にある日本大使館や領事館で査証(ビザ)の発給申請を行う。
③発給された査証(ビザ)を持って、空港等で入国審査官の審査を経て日本に入国する。
在留資格の種類及び就労との関係は、以下の通りです。なお、就労している場合には、在留資格に関係なく、労働基準関係法令が全て適用されます。
●就労資格⇒当該資格の範囲内で就労可能
外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、高度専門職、経営・監理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興行、技能、特定技能、技能実習
●非就労資格⇒資格外活動として就労可能(業務範囲に制限なし)
文化活動、短期滞在、留学、研修、家族滞在
●特定活動⇒資格外活動として就労可能(業務範囲に制限なし)
EPAに基づく外国人看護師・介護福祉士候補者、ワーキングホリデーなど
●居住資格(身分に基づく在留資格)⇒就労に関する制限なし(業務範囲に制限なし)
永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者
社会保険労務士法人エスネットワークス
特定社会保険労務士M・K
事業会社での人事労務キャリアを活かし、クライアントの労務顧問を務めている。労働法をめぐる人と組織に焦点を当てる「生きた法」の実践をモットーとし、社会保険労務士の立場からセミナーや講演を通して、企業に“予防労務”の重要性を呼び掛けている。日本産業保健法学会会員。