【アウトソーシングほっとニュース】「年5日の年次有給休暇」具体的な取扱方法
年 5 日の年次有給休暇の取得義務化
「2019 年 4 月からの年 5 日の年次有給休暇の取得義務化」が開始しています。
今回はよくあるケースを事例にして、具体的な取扱方法を記していきます。まず大前提として、2019 年 4 月 1 日以降に「年次有給休暇を 10 日以上与えた日が基準日となる」ことを念頭に、それぞれのケースを見ていきましょう。
ケース①入社日前倒しで 10 日以上の年次有給休暇を付与した場合
10 日以上与えた日が基準日ですから入社日が基準日となり、基準日(入社 日)からの 1 年間に 5 日の年休を取得させなければなりません。
ケース②入社日に 5 日の年次有給休暇を付与し、3 ヶ月後にさらに年次有給休暇を 5 日付与した場合
合計 10 日与えた日が入社日から 3 ヶ月後になりますから、入社日から 3 ヶ月後が基準日となります。その基準日からの 1 年間に 5 日の年休を取得させなければなりません。ただし、入社日からの基準日の前日までに、労働者が自ら請求・取得していた場合はその日数分を 5 日から控除できます。
ケース③2019 年 4 月 1 日に入社し、2019 年 10 月 1 日に 10 日の年次有給休暇を付与、翌年後は、全社統一起算日2020 年 4 月 1 日に前倒しで 11 日の年次有給休暇を付与した場合
10 日以上与えた日が 2 つあり、基準日が2つ発生しています。原則の考え方をベースにすると、それぞれの基準日からの付与しなければならない日数と期間は以下の通りとなります。
①2019 年 10 月 1 日(1 年目の基準日)⇒2020 年 9 月 30 日までに 5 日付与義務
②2020 年 4 月 1 日(2 年目の基準日)⇒2021 年 3 月 31 日までに 5 日付与義務
これだと、2020 年 4 月 1 日から 2020 年 9 月 30 日までの 6 ヶ月間重複する期間が発生し、どちらの期間の取得日数にカウントするか煩雑になってしまいます。そこで、今回の制度では、比例按分によって2つの期間を合算し、その期間を按分した年次有給休暇の日数で良いこととなっています。
● 計算式︓2019 年 10 月 1 日から 2021 年 3 月 31 日まで(18 ヶ月)÷12×5 日=7.5 日
つまり、7.5 日が上記期間内の付与義務日数となります。(半休制度がなければ 8 日になります)
おわりに
年 5 日の年次有給休暇の取得義務化によって、人員規模の大きな事業場や中途採用を多く行っている企業などは個々の労働者の年次有給休暇の日数を管理することが複雑になることが想定されます。そういった事態に対しては一斉付与日を設けることや基準日を統一する、計画的付与制度を行うなど対応について検討する必要もあると思われます。そのような場合の管理方法などの詳細につきましては以下、厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署の「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」https://www.mhlw.go.jp/content/000463186.pdf のP11 以降をご参照ください。
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この記事を書いたのは・・・
社会保険労務士法人エスネットワークス
特定社会保険労務士M・K
事業会社での人事労務キャリアを活かし、クライアントの労務顧問を務めている。労働法をめぐる人と組織に焦点を当てる「生きた法」の実践をモットーとし、社会保険労務士の立場からセミナーや講演を通して、企業に“予防労務”の重要性を呼び掛けている。日本産業保健法学会会員。