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【アウトソーシングほっとニュース】労働基準関係法令違反に関する公表事案

厚生労働省は9月30日、ホームページに「労働基準関係法令違反に係る公表事案」を掲載しました。2023年9月1日から2024年8月31日の間に、都道府県労働局が労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法、労働安全衛生規則等の労働基準関係法令違反の疑いで送検した事案を集約したもので、送検事例の概要が掲載されています。

企業名公表とは

 このように、労働基準関係法令違反が発覚し送検された場合、企業名が公表されることがあります。企業名が公表されると、厚生労働省や各都道府県労働局のホームページに一定期間掲載されるため、誰でもその情報にアクセスすることが可能となります。公表される内容は、次の通りです。
●企業・事業場名称
●所在地
●公表日
●違反法条項
●事案概要
●その他参考事項

企業名公表の目的

 企業名公表は、法令遵守を徹底させ違反を未然に防ぐことを目的としており、この制度は、深刻な労働問題に対し、制裁の役割を果たしていると言えます。
 企業に問題を是正するよう示すのが第一義的な目的なのですが、法違反に対する制裁として行われる以外に、違法状態を改善しない企業を公表することで、社外に警告するという情報提供の目的もあります。これにより、いわゆる“ブラック企業”と呼ばれる企業に入社したり、取引したりする被害者を減らすことを意図しています。
 企業にとって企業名が公表されることには、次のようなリスクがあります。
企業イメージの悪化
社会的な信用の低下
採用活動への影響
取引先や顧客からの信頼を失う

企業名公表の基準

 労働基準監督官が取り扱う労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、じん肺法、家内労働法、賃金の支払の確保等に関する法律などの労働基準関係法令違反が認められた場合、まずは労働基準監督官によって是正勧告や指導票の交付がなされ、それでも是正をしない場合に送検されることがあります。
 なお、労働者等が告発した場合や重大な事案、または労災隠しなどの悪質な違反が認められる事案は、是正されるかどうかにかかわらず、労働基準監督官によって捜査が行われ、送検されることもあり得ます。
 労働基準監督官によって送検された事案については、企業名公表の基準に該当することとなります。ただし、送検された事案がすべて公表されているわけではなく、比較的軽微な事案であったり、負傷等した労働者の意向などを踏まえて公表を行わないケースもあるようです。

企業名公表までの流れ

 労働基準監督官は「監督指導」という重要な役割を担っています。監督指導は、法定労働条件の履行確保のために行われますが、多くの場合、労働基準監督官が事業場に立ち入り、労働環境や労働条件が遵守されているかを確認する調査が契機になります。労働基準法では、労働基準監督官は「事業場、寄宿舎その他の附属建設物に臨検し、帳簿及び書類の提出を求め、又は使用者若しくは労働者に対して尋問を行うことができる」と規定しており、労働基準監督官の立ち入り調査に法的な根拠を与えています。この立ち入り調査のことを「臨検監督」と言い、臨検監督には、下図の通り、主に3つの種類があります。

臨検監督の図解





  

 労働基準監督官が監督指導をした場合に、何らかの指導が必要と判断したときは、原則としてその指導の内容を書面で事業場に通知します。この書面の代表的なものが「是正勧告書」と「指導票」であり、どちらも行政指導文書です。
 是正勧告書は、法違反を指摘し、その是正を指導するものであり、一方、指導票は、法違反を指摘するものではなく、法違反を是正するための方法、労働条件の改善を図るための措置、労働災害防止のための措置などを指導するものです。 また、労働基準監督官が監督指導時に交付する書類として「使用停止等命令書」がありますが、これは労働安全衛生法に基づくもので、その性質は行政処分です。使用停止等命令書の内容は様々ですが、危険な機械や設備の使用停止を命ずるもの、危険な場所での作業停止を命ずるもの、危険な場所への立ち入りを禁止するものなどがあります。
 労働基準監督官は法違反があるからといって、すぐに処罰を求め送検するわけではありません。法違反を送検するかどうかは、その法違反の事実が重大または悪質なものかどうかを基準として、労働基準監督署長が判断します。具体的には、①法違反を原因として死亡災害等重大な労働災害を発生させるなどした場合、②是正勧告に従わず法違反を是正しない、是正報告において虚偽の報告をするなど企業に自主的な是正意思がない、自浄作用がないと考えられる場合などには、司法処分として送検されてしまいます。労働基準監督官による監督指導後の手続きフロー


 

労務リスクの把握

 企業名公表は社会的な制裁の意義を持っており、公表による企業のイメージダウンといった経営面でのダメージはかなり大きいと考えられます。事業主には、労働基準関係法令を正しく理解し、従業員が安心・安全に働くことができる労働環境づくりに取り組むことが求められることは言うまでもありません。
 ただ、多くの従業員が働く組織では、コンプライアンス遵守を徹底することは相当難しいため、どんな企業でも潜在的に労務リスクを抱えていることは否定できません。この機会に、専門家による労務監査を実施し、適切な対策を講じていくことをお勧めします。
 社会保険労務士法人エスネットワークスでは、給与計算・社会保険手続き、就業規則等の改訂をはじめ、メンタルヘルスやハラスメントを始めとする労務リスクの大きい問題に関するご相談にも対応しています。詳しいサービス内容についてはサービス一覧からご確認いただき、お気軽にお問い合わせください。

 

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