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【アウトソーシングほっとニュース】11月は「過労死等防止啓発月間」です

近年、働き過ぎやパワーハラスメント等の労働問題によって多くの人の尊い命が失われ、また心身の健康が損なわれ、深刻な社会問題となっています
 さて、毎年11月は、過労死等防止対策推進法に基づき、「過労死等防止啓発月間」と定められています。月間中は、「過労死等防止対策推進シンポジウム」の開催やポスターなどによる周知・啓発のほか、「過重労働解消キャンペーン」として、長時間労働の是正や賃金不払残業などの解消に向けた重点的な監督指導、全国一斉の無料電話相談(過重労働解消相談ダイヤル)などが行われています。

過労死等とは

 「過労死」という言葉は、1980年代後半から注目され始め、その後、日本の深刻な社会問題であることが世界的に広く知られるようになりました。Oxford English Dictionary Onlineには「KAROSHI」という単語が登録されており、日本語の「過労死」が、そのまま英単語として世界で認知されています。
 「過労死等」とは、業務における過重な負荷による脳・心臓疾患業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする死亡やこれらの疾患のことを言い、過労死等防止対策推進法第2条により、以下のとおり定義づけられています。
●業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡
●業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
●死亡には至らないが、これらの脳血管疾患・心臓疾患、精神障害
 長期間にわたる特に過重な労働は、著しい疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられ、さらには脳・心臓疾患の発症に影響を及ぼすと言われています。脳・心臓疾患に係る労災認定基準においては、週40時間を超える時間外・休日労働がおおむね月45時間を超えて長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まり、発症前1か月間におおむね100時間または2か月間ないし6か月間にわたって1か月当たりおおむね80時間を超える時間外・休日労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できるとされています。

 過労死等の防止のための対策を推進し、過労死等がなく、仕事と生活を調和させ、健康で充実して働き続けることのできる社会の実現に寄与することを目的として、2014年11月に「過労死等防止対策推進法」が施行されました。
 この法律に基づき、政府は、過労死等の防止のための対策を効果的に推進するため、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」を定めており、2015年以降、おおむね3年ごとに見直しを行っています。 

 しかし、過労死等の労災支給決定件数は近年増加傾向にあり、また、2024年4月1日から工作物の建設の事業、自動車運転の業務、医業に従事する医師等についても時間外労働の上限規制が適用されたこと等を踏まえ、その遵守徹底とともに、労使を始め、取引先等の関係者に対して広く周知・啓発を行うこと等を通じ、引き続き、長時間労働の削減等の過重労働解消に向けた機運の醸成を行う必要があります。

重点的な監督指導

 このため、厚生労働省では、「過重労働解消キャンペーン」を11月に実施し、長時間労働の削減等の過重労働解消に向けた取組を推進するため、使用者団体・労働組合への協力要請、リーフレットの配布などによる周知・啓発等の取組を集中的に実施しています。 
 また、「過重労働解消キャンペーン」の一環として、長時間労働の是正や賃金不払残業などの解消に向けた重点的な監督指導が実施されています。重点監督の対象となる事業場・企業は次の通りです。
長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場
各種情報から時間外・休日労働時間数が1か月当たり80時間を超えていると考えられる事業場
労働基準監督署及びハローワークに寄せられた相談等から、離職率が極端に高いなど若者の使い捨てが疑われる企業

 そして、以下の事項について重点的に確認することとされており、監督指導の結果、 重大・悪質な法違反が認められた場合は、送検のうえ、公表が行われる可能性があります。
◆時間外・休日労働が36協定の範囲内であるか
◆賃金不払残業が行われていないか
◆不適切な労働時間管理になっていないか
◆長時間労働者に対して、医師による面接指導等、健康確保措置が確実に講じられているか 

過労死等防止のための取り組み

 企業が取り組むべき過労死等防止の対策には、以下のものがあります。
長時間労働の削減
働き方の見直し
職場におけるメンタルヘルス対策の推進
職場のハラスメントの予防・解決
相談体制の整備等
過重労働による健康障害の防止

 厚生労働省は、2024年11月〜2025年1月の間、全国22ヶ所/オンライン(Zoom)25回にわたり「令和6年度 過重労働解消のためのセミナー」を開催します。セミナーでは、過重労働防止に関連する基本ルールや裁判例の解説、また、企業の事例紹介など実務的に使える知識やノウハウを習得することができますので、事業主、企業の人事労務担当者や管理職の方はぜひ参加をご検討ください。

 ところで、働き方を見直し長時間労働を是正するうえで有効な手段になると考えられているものが「勤務間インターバル制度」です。勤務間インターバル制度は、1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル時間)を確保する仕組みで、労働者の生活時間や睡眠時間を確保するために重要な制度とされています。
 勤務間インターバル制度を導入することによって、企業・労働者双方に次のようなメリットが期待されます。
①労働者の健康の維持・向上につながります
 インターバル時間が短くなるにつれてストレス反応が高くなるほか、起床時疲労感が残ることが研究結果から明らかになっています。十分なインターバル時間の確保が、従業員の健康の維持・向上につながります。
②労働者の確保や定着が期待できます
 労働力人口が減少するなか、人材の確保・定着は、重要な経営課題になっています。十分なインターバル時間の確保により、ワーク・ライフ・バランスの充実を図ることは、職場環境の改善等の魅力ある職場づくりの実現につながり、人材の確保・定着、さらには、離職者の減少も期待されます。
③生産性の向上につながります
 十分なインターバル時間の確保は、仕事に集中する時間とプライベートに集中する時間のメリハリをつけることができるようになります。このため、仕事への集中度が高まり、製品・サービスの品質水準が向上するのみならず、生産性の向上にも期待できます。

 「勤務間インターバル制度」については、 お役立ちコンテンツ【社労士解説】働き方はどう変わる?シリーズにてYoutube配信を行っていますので、ぜひご視聴ください。
(参考)【社労士解説】働き方はどう変わる?コンテンツ一覧
(1)勤務間インターバル制度
(2)選択式週休3日制
(3)副業・兼業
(4)テレワーク✖フレックスタイム制
(5)治療と仕事の両立支援
(6)LGBTフレンドリー

過重労働による健康障害を防止するには

 働き過ぎによる健康障害を防止するためには、企業は労働者の健康づくりに向け積極的に支援すること、労働者は自らの健康管理に努めることが必要です。
 労働者は、周囲の人や専門家に早めに相談をしましょう。長時間労働を繰り返し十分な疲労回復ができないままの状態が続くと、身体も心も疲弊し、仕事だけでなく、私生活にまで大きな影響を及ぼしてしまいます。次のような症状が当てはまる場合、すぐに身体を休めることを考えてください。
・記憶力、集中力の低下
・急に意識が飛ぶ
・焦燥感がある
・1日中眠気に襲われる
・イライラする
 健康管理も仕事の一環です。体を壊してからでは遅く、会社に迷惑がかかるだけでなく、家族や友人も悲しみ、何より自分自身が一番辛い思いをすることになります。休養することも仕事のうちと捉え、「過労死等防止啓発月間」を、心身を酷使する長時間労働を是正する機会にしましょう。

社会保険労務士法人エスネットワークス
特定社会保険労務士M・K

事業会社での人事労務キャリアを活かし、クライアントの労務顧問を務めている。労働法をめぐる人と組織に焦点を当てる「生きた法」の実践をモットーとし、社会保険労務士の立場からセミナーや講演を通して、企業に“予防労務”の重要性を呼び掛けている。日本産業保健法学会会員。

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