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【アウトソーシングほっとニュース】高年齢雇用継続給付の支給率が変わります

 「雇用保険法等の一部を改正する法律」(令和2年法律第14号)の施行に伴い、令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率が変わり、「最高15%」から「最高10%」に引き下げられることとなります。
 ただし、令和7年3月31日以前に60歳に達した日を迎えた方は、現行の支給率から変更はありません。具体的には、次のとおりです。
60歳に達した日(その日時点で被保険者であった期間が5年以上ない方はその期間が5年を満たすこととなった日)が、
●令和7年3月31日以前の方……各月に支払われた賃金の15%(従来の支給率)を限度として支給
●令和7年4月1日以降の方……各月に支払われた賃金の10%(改正後の支給率)を限度として支給
なお、60歳に達した日(60歳到達日)とは、60歳の誕生日の前日をいいます。

雇用保険制度の雇用継続給付

 雇用保険は、政府が管掌する強制保険制度で、「失業等給付」、「育児休業給付」及びこれらに附帯する事業(雇用安定事業能力開発事業)で成り立っています。失業等給付には、失業した場合に支給される「求職者給付」と「就職促進給付」、自ら教育訓練を受けた場合に支給される「教育訓練給付」、そして、雇用継続が困難となる事由が生じた場合に支給される「雇用継続給付があります。
 育児休業給付は、かつては雇用継続給付に位置づけられていましたが、2020年の改正で失業等給付から独立し、子を養育するために休業した労働者の生活および雇用の安定を図るための給付として位置づけられることとなりました。

高年齢雇用継続給付とは

 雇用継続給付は、職業生活の円滑な継続を援助、促進することを目的として、「高年齢雇用継続給付」と「介護休業給付」が支給されるものです。
 高年齢雇用継続給付は、「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」に2つに分かれますが、いずれの給付金も、雇用保険の被保険者であった期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の雇用保険被保険者が、原則として60歳以降の賃金が60歳時点に比べて、75%未満に低下した状態で働き続ける場合に支給されます。
 高年齢雇用継続基本給付金は、同じ会社で再雇用された場合の給付金で、失業手当(基本手当)を受け取らずに働き続けた方が対象となります。一方、高年齢再就職給付金は、基本手当を受給してから他社に再就職した場合の給付金です。

支給対象期間

 雇用保険被保険者が60歳に達した月から65歳に達する月までです。ただし、60歳時点において、雇用保険に加入していた期間が5年に満たない場合は、雇用保険に加入していた期間が5年となった月からが支給対象期間となります。また、高年齢再就職給付金については、60歳以後の就職した日の属する月(就職日が月の途中の場合、その翌月)から、1年又は2年を経過する日の属する月(65歳に達する月が限度)までです。

支給額

 現行は、60歳以上65歳未満の各月の賃金が60歳時点の賃金※の61%以下に低下した場合は、各月の賃金の15%相当額となり、60歳時点の賃金の61%超75%未満に低下した場合は、その低下率に応じて、各月の賃金の15%相当額未満の額となります。ただし、各月の賃金が376,750円(この金額は毎年8月1日に改定)を超える場合には支給されません。
 例えば、高年齢雇用継続基本給付金について、60歳時点の賃金が月額40万円で再雇用後の賃金が24万円に低下した場合、60歳時の60%に下がったことになりますので、支給率は15%で、1か月当たりの賃金24万円の15%に相当する額3万6千円が支給されます。
 改正後は、令和7年4月1日以降に60歳に達した日を迎えた方について、60歳以上65歳未満の各月の賃金が60歳時点の賃金の64%以下に低下した場合の支給額は、各月の賃金の10%相当額となり、60歳時点の賃金が64%超75%未満に低下した場合の支給額は、その低下率に応じて、各月の賃金の10%相当額未満の額となります。
 なお、高年齢雇用継続給付は非課税です。
※60歳時点の賃金は、原則として、60歳に到達する前6か月間の総支給額(賞与は除く)を180で除した賃金日額の30日分の額(上限額・下限額あり)です。

支給申請手続き

 高年齢雇用継続給付の支給を受けるためには、原則として2か月に一度、事業主が、事業所の所在地を管轄する公共職業安定所に支給申請書を提出する必要があります。
【初回の申請に必要な書類】
●雇用保険被保険者60歳到達時等賃金証明書
●高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書
●賃金台帳、労働者名簿、出勤簿又はタイムカード等被保険者が雇用されていることの事実、賃金の支払状況及び賃金の額を証明することのできる書類
●被保険者の運転免許証など被保険者の年齢が確認できる官公署から発行・発給された身分証明書などの書類
【2回目以降の申請に必要な書類】
●高年齢雇用継続給付支給申請書
●賃金台帳、出勤簿又はタイムカード
 申請手続は、原則として、事業主を経由して行う必要があります。ただし、被保険者本人が希望する場合は、本人が申請手続きを行うことも可能です。
 以前は、雇用継続給付を事業主が行う場合には労使協定が必要でした。しかし、雇用保険法施行規則が平成28年2月16日に改正され、雇用継続給付は原則、事業主が申請することとなったため、それまで必要だった労使協定が不要になっています。

まとめ

 高年齢雇用継続給付は、平成7年4月に創設され、平成15年4月までは賃金の原則25%相当額が支給されていました。平成15年5月から賃金の原則15%相当額となり、上述の通り令和7年4月以降は賃金の原則10%に縮小されます。
 高年齢雇用継続給付の縮小の背景には、高年齢者雇用安定法の改正があり、企業には「65歳までの雇用確保措置」をとることが義務付けられています。そして、令和7年3月31日には労使協定で対象者を限定する経過措置が終了しますので、4月1日以降、企業は希望者全員に対して65歳までの雇用機会を確保しなければなりません。このような法改正と企業の取り組みにより、高年齢者が働きやすい環境が整備されつつあることから、高年齢雇用継続給付の縮小が決定されたというわけです。
 高年齢雇用継続給付による補塡を見込んだ賃金制度を設計されている企業は、従業員間での不公平感が生じないよう、定年後再雇用の賃金について見直しが必要です。また、今後は、同一労働同一賃金を意識した処遇を検討する必要があり、高年齢雇用継続給付に頼らない賃金制度設計が求められています。

社会保険労務士法人エスネットワークス
特定社会保険労務士M・K

事業会社での人事労務キャリアを活かし、クライアントの労務顧問を務めている。労働法をめぐる人と組織に焦点を当てる「生きた法」の実践をモットーとし、社会保険労務士の立場からセミナーや講演を通して、企業に“予防労務”の重要性を呼び掛けている。日本産業保健法学会会員。




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