【アウトソーシングほっとニュース】厚生労働省では、「介護休業制度」特設サイトを開設しています
11月11日(いい日、いい日)は「介護の日」でした。介護の日は、「国民に介護の啓発を実施するための日」として毎年11月11日に設定されています。
高齢化などにより介護が必要な方々が増加している一方、介護にまつわる課題は多様化しています。介護についての理解と認識を深め、介護サービス利用者及びその家族、介護従事者等を支援するとともに、これらの人たちを取り巻く地域社会における支え合いや交流を促進する観点から、高齢者や障害者等に対する介護に関し、国民への啓発を重点的に実施する日とされています。
「介護休業制度」特設サイト
さて、厚生労働省では、仕事と介護を両立させるための各種制度の解説や関連する相談窓口などを紹介する特設サイトを開設しています。
特設サイトでは、労働者向けに「介護をしながら働き続けるためのポイント」が紹介されています。また、事業主の方向けに「従業員の仕事と介護の両立を支援する際の具体的な取組方法」や取組を進める際に活用できるお役立ちツールが掲載されています。
「介護離職防止」のための措置が強化されます
育児・介護休業法の改正に伴い、2025年4月1日から、介護離職防止のための個別の周知・意向確認、雇用環境整備等の措置が事業主の義務となります。
●介護の両立支援制度を利用しやすい雇用環境の整備
介護休業や介護両立支援制度等※の申出が円滑に行われるようにするため、事業主は以下①~④のいずれかの措置を講じなければなりません。
① 介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
② 介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
③ 自社の労働者の介護休業取得・介護両立支援制度等利用の事例の収集・提供
④ 自社の労働者へ介護休業・介護両立支援制度等の利用促進に関する方針の周知
※介護両立支援制度等とは、介護休暇に関する制度、所定外労働の制限に関する制度、時間外労働の制限に関する制度、深夜業の制限に関する制度、介護のための所定労働時間の短縮等の措置をいいます。
●介護に直面した旨の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置
介護に直面した旨の申出をした労働者に対して、事業主は介護休業制度等に関する以下の事項の周知と介護休業取得・介護両立支援制度等利用の意向の確認を、個別に行わなければなりません。
<周知事項>
① 介護休業に関する制度、介護両立支援制度等
② 介護休業・介護両立支援制度等の申出先
③ 介護休業給付金に関すること
<方法>
以下のいずれかによって行う必要があります。
①面談(オンライン面談も可能)
②書面交付
③FAX(本人が希望した場合のみ)
④電子メール等(本人が希望した場合のみ)
●介護に直面する前の早い段階(40歳等)での情報提供
労働者が介護に直面する前の早い段階で、介護休業や介護両立支援制度等の理解と関心を深めるため、事業主は介護休業制度等に関する以下の事項について情報提供しなければなりません。
<情報提供期間>
情報提供の時期は、以下のいずれかとしています。
① 労働者が40歳に達する日(誕生日前日)の属する年度(1年間)
② 労働者が40歳に達した日の翌日(誕生日)から1年間
<情報提供事項>
① 介護休業に関する制度、介護両立支援制度等
② 介護休業・介護両立支援制度等の申出先
③ 介護休業給付金に関すること
あわせて、介護保険制度についても周知することが望ましいとされています。
<方法>
以下のいずれかによって行う必要があります。
①面談(オンライン面談も可能)
②書面交付
③FAX
④電子メール等
●介護休暇を取得できる労働者の要件緩和
介護休暇について、引き続き雇用された期間が6か月未満の労働者を労使協定に基づき除外する仕組みが廃止されます。
●介護のためのテレワーク導入(努力義務)
要介護状態の対象家族を介護する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずることが、事業主に努力義務化されます。
隠れ介護とは
「隠れ介護」とは、 会社に家族の介護をしていることを知らせずに、介護を抱えこんでしまっている状態を指す言葉です。隠れ介護状態をしている方はかなり多いと言われており、今後、深刻な社会問題となっていくことが指摘されています。
介護をしながら働く人の中で実際に介護休業を取得する方は少なく、その多くは年次有給休暇等で休みながら施設探しに奔走したり病院への送迎をしたりして、家族の介護にあたっています。従って、介護休業を取る従業員が少ないから、家族の介護に直面している従業員がいないとは言えません。
年休等の取得だけで対応できればよいのですが、症状が進行するについて介護負担も重くなり、ついには限界を迎え、「介護離職」という道を選ばざるを得なくなってしまう方がとても多いのが実情です。隠れ介護の先に待ち受けているのは、働き続けたいのに働き続けられない状況です。「もっと早く相談してくれたら離職を防げたかも知れない」というご経験をされた人事労務担当者も多いと思います。
育児・介護休業法の目的は「介護離職の防止」、働き続けるための介護休業なのです。隠れ介護や介護離職を防ぐためには、企業が介護休業や介護両立支援制度について理解を深めることが重要です。
社会保険労務士法人エスネットワークス
特定社会保険労務士M・K
事業会社での人事労務キャリアを活かし、クライアントの労務顧問を務めている。労働法をめぐる人と組織に焦点を当てる「生きた法」の実践をモットーとし、社会保険労務士の立場からセミナーや講演を通して、企業に“予防労務”の重要性を呼び掛けている。日本産業保健法学会会員。