【アウトソーシングほっとニュース】職場における女性の健康支援
厚生労働省は11月26日、労働政策審議会の雇用環境・均等分科会に、女性活躍推進法改正に向けた方針を提示しました。その中で、企業が公表する行動計画に「女性の健康課題への取り組み」を盛り込むよう促すことを掲げています。
女性特有の健康課題は、業務効率や就業継続にも大きな影響を与えており、経営者が十分に理解し、職場環境などを適切に整備することで改善が期待される重点的テーマといえます。しかしながら、女性特有の健康課題は、その具体が把握しづらく、支援を躊躇する企業が多いのではないでしょうか。
女性特有の健康課題とは
男性と女性を比較すると、かかりやすい病気が違う、同じ病気でもかかりやすい年代や病状、治療法などが異なる場合がある、といったことがわかっています。女性は、思春期、性成熟期、更年期、老年期と生涯を通じて女性ホルモンが大きく変動し、その影響を受けやすくライフステージによってかかりやすい病気が違います。
下図は、年齢と女性ホルモンの分泌量によりかかりやすい病気や症状及びライフイベントが整理されていますので、女性の健康課題を理解する上で役に立つと思います。
なぜ女性の健康支援が必要なのか
経済産業省の調査では、女性従業員の約5割が女性特有の健康課題により「勤務先で困った経験がある」、また、女性従業員の約4割が女性特有の健康課題などにより「職場で何かをあきらめなくてはならないと感じた経験がある」と回答しています。また、働く女性を対象にした調査では、月経に伴う症状や疾病、更年期症状や障害によって仕事の能率に影響があると女性が回答する一方、ヘルスリテラシーが高いほうが月経や更年期にまつわる不調の際に仕事のパフォーマンスが下がる割合が低いことも報告されています。
健康課題の有無にかかわらず、女性が妊娠・出産、育児などライフイベントを通じて働き続け、その能力を発揮するためにも女性の健康支援が重要です。「健康に自信がある女性ほど長く働き続ける自信がある」、「健康に自信がある女性ほど離職検討の経験が少ない」といった調査結果もあり、健康を支援することで、女性の離職を防ぎ、仕事に対する自信やモチベーションを高める効果が期待されます。
女性の健康支援のための取り組みのポイント
「働く女性の心とからだの応援サイト」より、女性の健康支援に関する職場の取り組みについて主なポイントをご紹介します。
①ヘルスリテラシー向上の取り組み
・女性特有の健康課題や女性に多い症状に関する研修会の開催
・健康課題に関する啓発冊子の配布
・社内ポータルサイト等での健康情報掲載
・オンラインを利用したワークショップ、動画の配信 他
②健康に配慮した職場環境の整備
・不調時に横になれる休憩スペースの設置
・冷え性に対処した環境整備 他
③婦人科検診率向上のための取り組み
・乳がん検診、子宮けいがん検診受診料の補助
・勤務時間内に検診ができる仕組み
・検診受診の重要性(早期発見・早期治療の重要性)に関する啓発 他
④女性の健康課題を相談しやすい体制づくり
・女性特有の不調について相談できる女性の産業医、カウンセラーの配置
・対応可能な体制構築(産業医や婦人科医の配置や外部の医師の紹介)
・社内プロジェクトメンバーによる女性相談員の育成
・女性限定のチャットルーム等の設置、気軽に相談できる場を提供 他
⑤妊娠・出産等に関わる制度・支援の充実
・妊婦健診など母性健康管理のための制度・サポートの周知徹底
・不妊治療との両立支援 (通院時間の確保等)
⑥ハラスメントのない職場環境づくり
・セクシュアルハラスメント、マタニティハラスメント、パワーハラスメント防止に向けた方針の周知徹底
・法律に定められた措置に基づいた職場づくり
⑦休暇制度の充実・柔軟な働き方の実現
・生理休暇を取得しやすい環境の整備
・不調時の休養、治療・通院、検診と仕事を両立するために、休暇制度の整備や柔軟な働き方(フレックス、時差出勤、テレワークなど)の導入
⑧推進体制の整備
・推進計画の策定
・推進部署やプロジェクトチームの設置 他
⑨認定、顕彰制度の活用
・認定、顕彰制度の活用 (「健康経営優良法人」等)
「女性の健康推進室 ヘルスケアラボ」
ヘルスケアラボは、すべての女性の健康を支援するため、厚生労働省の研究班が作成し、情報発信を行っているウェブサイト(厚生労働省補助金事業として運営されています)で、月経のトラブルや女性に多い病気など女性の様々な健康問題に関する情報がわかりやすく提供されています。また、女性特有の病気のセルフチェックができるほか、生理痛の対処法や更年期の健康管理、妊娠や出産に関する基本情報など、女性が生涯を通じて直面する健康課題に対応するために役立つ情報も紹介されています。
まとめ
女性が働きやすい職場は、男女ともに働きやすい職場につながります。女性の健康支援を通じて、誰もが健康で生き生きと働くことのできる職場づくりに取り組んでいきましょう。
経済産業省が「働く女性の健康推進に取り組む企業と支援事業者取り組み事例集」を公表していますので、自社における取り組みのご参考にされてみてください。
社会保険労務士法人エスネットワークス
特定社会保険労務士M・K
事業会社での人事労務キャリアを活かし、クライアントの労務顧問を務めている。労働法をめぐる人と組織に焦点を当てる「生きた法」の実践をモットーとし、社会保険労務士の立場からセミナーや講演を通して、企業に“予防労務”の重要性を呼び掛けている。日本産業保健法学会会員。