【アウトソーシングほっとニュース】忘・新年会「実施」は59.6%、コロナ禍後の最高(東京商工リサーチ調査)
今年も残すところあと僅かとなり忘年会のシーズンを迎えましたが、実施率はまだコロナ禍前の水準に届いていないことがわかりました。
東京商工リサーチ(東京都千代田区)は12月11日、忘・新年会に関する企業向けアンケート調査の結果を発表しましたが、それによると、半数以上の企業が忘・新年会の実施を予定している一方で、従業員の抵抗感や開催ニーズの低さを考慮して開催しない企業も4割以上あることが明らかになりました。
忘・新年会は、コロナ禍で事態が一変し、2019年には78.4%だった実施率が2020年に5.6%まで下がり、宴会離れが急速に進みました。その後、新型コロナが5類に移行した昨年には実施率が55.9%まで回復し、今年は59.6%とコロナ禍後では最高となっていますが、それでもコロナ禍前の水準までには戻っていません。
忘年会は鎌倉時代に貴族が和歌を詠む行事として始まったとされています。今のような飲み会式の忘年会が始まったのは明治時代以降で、昭和の頃に会社で忘年会が行われることが恒例となりました。新年会の由来は奈良時代の重要な儀式である「元日の節会(がんじつのせちえ)」で、明治維新までの1200年間続き、現在の新年を祝う行事としての新年会になりました。
会社の忘・新年会には、上司と気軽に仕事以外の話題を話したり、普段ではあまり接点がない他部署の社員と交流したりすることで、その後の業務でスムーズな意思疎通ができるメリットがあります。
忘・新年会を「コロナ禍前も今回も実施する」理由
コロナ禍前から変わらず実施する理由の最多は「従業員の親睦を図るため」の87.1%、次いで「従業員の士気向上のため」の51.1%で、「会社の定番行事のため」は38.1%にとどまっています。
忘・新年会を「コロナ禍前は実施、今回は実施しない」理由
コロナ禍前の実施から一転し今回は実施しない理由の最多は「開催ニーズが高くないため」が65.1%、次いで、「参加に抵抗感を示す従業員が増えたため」の36.6%でした。仕事の上下関係を飲み会にまで引きずりたくない人が増えていることを表しているといえます。
忘・新年会は「労働時間か」
忘・新年会を実施する企業に労働時間になるかを尋ねた問いでは、「労働時間にならない」が90.2%で、「労働時間になる」と回答した企業は9.7%と1割に届いていません。産業別にみると、「労働時間になる」は、不動産業で14.7%、情報通信業で14.6%、小売業で14.4%と全体平均より高くなっています。
労働時間の該当性
労働基準法上の労働時間について、最高裁は「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものである」としています(三菱重工業長崎造船所事件 平成12年3月9日判決)。
一般的に忘・新年会は業務との関連性が薄く、原則として労働時間には当たらないとされますが、参加が業務上必要であり、かつ、参加が強制されているような場合には、例外的に労働時間に当たると考えるべきです。
労働時間として取り扱わない場合は、開催案内に「任意参加」であることを示したり、参加・不参加の希望アンケートをとったりするなどして、参加が強制されていないことを明示しておくことが肝要です。
社会保険労務士法人エスネットワークス
特定社会保険労務士M・K
事業会社での人事労務キャリアを活かし、クライアントの労務顧問を務めている。労働法をめぐる人と組織に焦点を当てる「生きた法」の実践をモットーとし、社会保険労務士の立場からセミナーや講演を通して、企業に“予防労務”の重要性を呼び掛けている。日本産業保健法学会会員。