【アウトソーシングほっとニュース】就活生に性的暴行疑いでNEC社員逮捕
日本電気株式会社(以下、NEC)は1月14日、「インターンシップで知り合った就職活動中の大学生に性的暴行を行ったとして警視庁が不同意性交の疑いで逮捕」した容疑者が同社社員であることを発表しました。
NECは社員の逮捕を受けて「被害に遭われた方や関係者の皆様にお詫び申し上げます」とコメントし、会社として警察の捜査に全面的に協力すると共に、逮捕された社員に対して事実確認を行ったうえで厳正な処分を行うとしています。
また、NECは今回の事件を受けて、学生が安心して就職活動を行えるよう採用活動指針を見直し、厳格化しました。
インターンシップや就職活動をめぐっては、社員などが学生に対してセクハラを行う被害が問題となっています。過去には、大林組と住友商事の社員がOB訪問の名目で就活生にセクハラを行った事件が報道されています。このような事件が起こると、当該企業は社会的信⽤を失い企業イメージの低下は免れず、採用の応募が減少するだけでなく、働いている従業員にも、働く意欲やモラルの低下により生産性に悪影響が及び、貴重な人材の退職・流失等の重大なリスクが生じます。
就活等ハラスメントとは
就活等ハラスメントとは、就職活動やインターンシップ中の学生、経験者採用への応募者等に対するハラスメントのことをいい、企業説明会や採用面接などでの性的な発言や身体への接触、食事への執拗な誘いのほか、他社への就職活動を終えるよう圧力をかける就活終われハラスメント(オワハラ)などが該当します。就活等ハラスメントは、立場の弱い応募者の尊厳や人格を不当に傷つける許されない行為です。
就活等ハラスメントの実態
厚労省の調査によると、2017~2019年度卒業で就職活動(転職を除く)またはインターンシップを経験した男女の中で、就活等ハラスメントを一度以上受けたと回答した人の割合は、4人に1人(25.5%)に上っています。
●受けた就活等ハラスメントの内容については、「性的な冗談やからかい」(40.4%)の割合が最も高く、「食事やデートへの執拗な誘い」(27.5%)、「性的な事実関係に関する質問」(23.6%)が続いています。
●就活等ハラスメントを受けた場面については、「インターンシップに参加したとき」(34.1%)の割合が最も高く、次いで「企業説明会やセミナーに参加したとき」(27.8%)となっています。
●就活等ハラスメントの行為者としては、「インターンシップで知り合った従業員」(32.9%)の割合が最も高く、「採用面接担当者」(25.5%)、「企業説明会の担当者」(24.7%)が続いています。
●就活等ハラスメントを受けての心身への影響としては、「怒りや不満、不安などを感じた」(44.7%)の割合が最も高く、次いで「就職活動に対する意欲が減退した」(36.9%)となっています。また、「学校を休むことが増えた」、「眠れなくなった」、「通院したり服薬をした」、「入院した」など精神や身体に悪影響が出たり、疾病を発生した人も少なからず見られました。
詳細は、「令和2年度 職場のハラスメントに関する実態調査報告書」(厚生労働省)をご覧ください。
就活等ハラスメント防止対策義務化の動き
厚労省は、就活等ハラスメント防止措置を企業に義務付ける準備を進めています。2024年12月26日、労働政策審議会雇用環境・均等分科会は、「女性活躍の更なる推進及び職場におけるハラスメント防止対策の強化について」と題する建議を行いました。就活等ハラスメントの防止を、職場における雇用管理の延長と捉えた上で事業主の雇用管理上の措置義務とし、学生等と面談する際のルールを事前に定め、被害の相談窓口設置や周知、被害者への謝罪対応を求めます。1月27日、労働政策審議会は、男女雇用機会均等法の改正案要綱について妥当と答申しましたので、厚労省は、答申に基づき、改正法案を今通常国会に提出する予定です。
就活等ハラスメント防止対策の状況
経団連(日本経済団体連合会)から、1月21日、会員企業を対象とした「ハラスメント防止対策に関するアンケート調査結果」が公表されましたので、その中から就活等ハラスメント防止対策の状況をご紹介します。
●就活等ハラスメントの防止について、約6割(59.9%)が積極的に取組みを推進しており、 「対策が必要と認識」している企業は約2割(20.7%)。
●就職活動中の者に対するハラスメント防止のために実施している取組みとしては、「リクルーターや採用担当者等を対象とする面談時等のルールの策定」(73.6%)が最も多く、これに「リクルーターや採用担当者等向けの研修の実施」(69.1%)、「ハラスメント行為者に対する処罰の明確化」(45.5%)が続いている。
●インターンシップ中の者に対するハラスメント防止のために実施している取組みとしては、「インターンシップ受入れ部署の担当者等を対象とするルールの策定」(60.2%)が最も多く、これに「インターンシップ受入れ部署の担当者等向けの研修の実施」(58.2%)、「ハラスメント行為者に対する処罰の明確化」(42.9%)が続いている。
さいごに
就活等ハラスメントは決して許されない行為であることはもちろん、明るみに出れば会社も大きなダメージを受けることになります。学生等の安全と自社の将来を守るためにも、以下を参考に、就活等ハラスメントの防止対策に取り組んでください。
●全従業員(特に採用担当者)に対し、就活等ハラスメントを含む、すべてのハラスメントを禁止する方針を明確にする。
●就活等ハラスメントを行った場合には、その行為者を処分する懲戒規定等を設け、周知する。
●採用担当者を含む従業員に、ハラスメント防止に関する研修を継続的に実施する。
●学生・応募者等と接する際、採用担当者は可能な限り2名以上とし、オンラインも含め面談やオリエンテーションの際は複数名で対応するなど、採用活動におけるルールを明確にする。
●学生・応募者向けに就活等ハラスメント相談窓口を設置し、周知する。
社会保険労務士法人エスネットワークス
特定社会保険労務士M・K
事業会社での人事労務キャリアを活かし、クライアントの労務顧問を務めている。労働法をめぐる人と組織に焦点を当てる「生きた法」の実践をモットーとし、社会保険労務士の立場からセミナーや講演を通して、企業に“予防労務”の重要性を呼び掛けている。日本産業保健法学会会員。