【アウトソーシングほっとニュース】職務給の導入に向けたリーフレット・手引きを公表(厚生労働省)
厚生労働省は2月26日、「職務給」の導入に向けたリーフレットと手引きを公表しました。職務給とは、社員の役割や職務の重要度に基づいて決定される給与のことを指します。
また、職務給は、「経済財政運営と改革の基本方針2023(骨太方針2023)」において示された「三位一体の労働市場改革」の柱(以下の3つ)の一つとされています。
①リ・スキリングによる能力向上支援
②個々の企業の実態に応じた職務給の導入
③成長分野への労働移動の円滑化
政府は、この改革を進めることで、構造的な賃上げを通じ、日本企業と外国企業の間に存在する賃金格差を縮小することを目指しています。
今回公表されたリーフレットと手引きは、職務給の導入促進に向けた周知・広報資料として公開されたもので、手引きはPDFファイル10頁建てとなっており、リーフレットは手引きに織り込まれた内容を抜粋・再構成したかたちでPDFファイル2頁に取りまとめられています。
職務給の導入に関するメリット
役割や職務に基づいた給与である職務給には、企業や社員の注目が集まっています。
職務給を導入している企業では、「社員に求める役割・職務の要件が明確になる」ことをメリットに挙げる企業が多く、他にも「仕事に応じた賃金を支払うことができる」や「人材の確保・定着につながる」、「社員の仕事に対する意欲が高まる」等をメリットとして感じているようです。
一方、社員が職務給にメリットを感じる点としては、「より高度な役割・職務に挑戦したくなる」、「担当する役割・職務に関わる能力を高めたくなる」、「給与の決まり方に対する納得感が高まる」、「担当する役割・職務に対する責任感が高まる」等が挙がっています。
職務給の導入に向けた留意点
職務給は、等級制度や評価制度はもちろんのこと、採用や配置転換、育成等の広範な人事制度と関連しています。他の人事制度との一体的な運用が可能であるかを事前に検討しておくことは、職務給の円滑な活用に役立ちます。
また、労働条件の変更を行う場合には、関係法令を踏まえる必要があります。
● 労働条件の変更には、原則として社員と企業側の合意が必要です(労働契約法第8条)。
● 社員の合意なしに一方的に就業規則を変更して、労働条件を不利益に変更することはできません。
ただし、社員に変更後の就業規則を周知し、かつ、その変更が合理的なものであれば、就業規則の変更によって労働条件を変更することができます(労働契約法第9条、第10条)。
職務給を導入している企業の事例
政府では、個々の企業に合った職務給の導入を検討する参考となるよう、職務給を既に導入している企業20社の事例を掲載した「ジョブ型人事指針」を公表していますので、検討の参考にされてください。
この記事を書いたのは・・・
社会保険労務士法人エスネットワークス
特定社会保険労務士M・K
事業会社での人事労務キャリアを活かし、クライアントの労務顧問を務めている。労働法をめぐる人と組織に焦点を当てる「生きた法」の実践をモットーとし、社会保険労務士の立場からセミナーや講演を通して、企業に“予防労務”の重要性を呼び掛けている。日本産業保健法学会会員。