『エスネットワークス人事労務通信 2024年7月号』を掲載致しました
令和6年分年末調整のご準備はお早めに
◆定額減税対応は年末調整でも発生
6月1日以降に支払う給与等から定額減税が実施されましたが、令和6年分年末調整においても対応は発生します。
例えば、令和6年6月2日以後に採用した従業員は月次減税を行っていないので、年末調整で定額減税額の控除(年調減税)を行うほか、令和6年7月以降に子どもが生まれ扶養親族の人数が増えた場合、定額減税額の差額は年末調整または確定申告により精算するなどがあるためです。
◆「給与所得者の保険料控除申告書」が変更に
令和5年度税制改正により保険料控除申告書の記載事項に改正があり、令和6年10月1日以後提出分、つまり令和6年分年末調整から適用されます。
保険金等の受取人と申告者との続柄を記載する欄が削除され、様式に変更があります。
◆「令和6年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書 兼 所得金額調整控除申告書」に定額減税に係る記載欄が追加
月次減税額の計算に含めた同一生計配偶者がその後就職等し、令和6年分の合計所得金額が48万円超となった場合、年調減税額の計算に含めないため、定額減税の対象となるかを確認するための欄等が追加されています。
◆改正対応は令和7年も続く
さらに、令和5年度税制改正により、令和7年1月以降、扶養控除等申告書について「簡易な申告書」が導入されます。
このように、令和6年分年末調整から令和7年1月の源泉徴収事務においては、様々な改正に対応しながら正確に実務を行うことが求められます。事前の周知や、早めの書類配付および回収などが望ましいと言えるでしょう。
【国税庁「変更を予定している年末調整関係書類(事前の情報提供)」】
【同庁「令和6年分所得税の定額減税Q&A(概要・源泉所得税関係【令和6年5月改訂版】)」】
「退職代行」からの連絡で従業員の離職を経験した大企業は約2割~東京商工リサーチの調査から
東京商工リサーチは、2024年6月3日~10日、企業を対象に「人材確保の施策」と「退職代行」についてインターネットでアンケート調査を行いました(有効回答は5,149社)。今回はこの中から、主に、「退職代行」についての回答結果をご紹介します。
◆大企業は18.4%、中小企業は8.3%
「2023年1月以降、「退職代行」業者を活用した従業員の退職があったか」という質問で、大企業は499社中92社(18.4%)、中小企業は4,650社中387社(8.3%)が「あった」と回答しました。
企業全体では、「正社員・非正規社員であった」(1.9%)、「正社員のみであった」(0.9%)とあり、これらを合計し「退職代行を活用した従業員の退職があった」企業は9.3%と約1割に上りました。
◆業種別では「洗濯・理容・美容・浴場業」が最多
業種別にみると、最多の「洗濯・理容・美容・浴場業」(33.3%)に続いて、百貨店などを含む「各種商品小売業」(26.6%)、旅館やホテルなどを含む「宿泊業」(23.5%)がランクインしています。
一般消費者と直接対面する接客業や販売業に多く見られました。
「自分からは言い出しにくかった」、「早く退職したかった」など、従業員が退職代行を利用する理由は様々です。そして多くの企業で、突然の退職は歓迎できるものではないでしょう。
企業としては、様々なリスクから従業員を守る環境整備や、相談しやすい職場雰囲気作りがますます求められるようになるでしょう。
【東京商工リサーチ「2024 企業の「人材確保・退職代行」に関するアンケート調査」】
個人データの漏えい事案が大幅増加~個人情報保護委員会「令和5年度年次報告」より
◆個人データ漏えい事案の増加
企業による個人情報漏えい事故はしばしばニュースでも取り上げられるところです。個人情報保護委員会は令和5年度の年次報告(個人情報保護法168条の規定に基づき、委員会の所掌事務の処理状況について毎年国会に報告するもの)を行っており、それによれば、令和5年度においては、個人情報取扱事業者等の個人データの漏えい等事案について12,120 件(前年度7,685 件)の報告処理を行ったとしています。
◆漏えいした情報の種類
同報告書によれば、委員会に対し直接報告された事案について、漏えい等した情報の種類としては「顧客情報」が83.5%と最も多くなっています。その形態別に見ると、紙媒体のみが漏えい等したもの(82.0%)が、電子媒体のみが漏えい等したもの(12.2%)より多くなっています。
また、個人情報保護法律施行規則7条で定める報告義務の類型による分類において、最も多くを占めたのは「要配慮個人情報を含む個人データの漏えい等」(89.7%)、次いで「不正アクセス等、不正の目的をもって行われたおそれのある個人データの漏えい等」(8.1%)となっています。
◆漏えい等事案の発生原因の多くがヒューマンエラー
報告書では、上記のような傾向となった要因として、漏えい等事案の発生原因の多くが誤交付、誤送付、誤廃棄および紛失といったいわゆるヒューマンエラーであったことにも触れられています。
個人情報の取扱いに関しては厳しく法規制されていくなか、最近では不正アクセス等による漏えい事案も増加しているところです。漏えい事故が発生した場合の影響の大きさを考えると、企業としては、ハード面、ソフト面あらゆる角度からの対策が必要になってくるでしょう。
【個人情報保護委員会「令和5年度個人情報保護委員会年次報告」】
通称使用を認める企業が多数も課題あり~経団連の調査より
◆通称使用を認める企業が多数
社員の通称(旧姓含む)使用は、最近では多くの企業が認めているところでしょう。メリットとして、従業員の実績の連続性が担保される、結婚・離婚等のプライバシーが保たれる、メールアドレス等の変更が不要といった点が挙げられます。他方、戸籍名が必要な手続きもあるため、社内では戸籍名と通称の2つを管理しなければならず、事務手続が煩雑になるなどの課題も認められています。
◆通称使用に関する調査
一般社団法人日本経済団体連合会は、企業での通称使用について調査結果を公表しました。以下はその要点です。
- 通称(ビジネスネーム)の使用
調査対象企業の約90%以上が、役職員(役員を含む社員)に対して通称の使用を認めています。姓だけでなく、名の部分も含めて自由に選ぶことを認めている企業もあります。また、婚姻・離婚等に関係なく、自由に姓を選ぶことを認めている企業も存在します。
- 通称使用に関連する課題
書類や帳票において、通称と戸籍姓の統一が確立できず、関係する社員の混乱を招くケースがあります。また、社内システムが通称使用に対応していないため、管理が煩雑になることがあります。
- 女性エグゼクティブの姓(氏)の取扱い
調査対象企業の女性役員の約96%が、役職員に対して通称の使用を認めていると答えています。
この調査結果からは、通称の使用が広く認められている現状と、それだけでは解決できない課題が読み取れます。夫婦別姓制度の議論も活発化する中で、誰もが働きやすい社会となるために、企業ができることを考えていきたいですね。調査の詳細は以下をご覧ください。
【一般社団法人 日本経済団体連合会「「企業」における社員の姓(氏)の取扱いに関する調査結果および「女性エグゼクティブ」の姓(氏)の取扱いに関する緊急アンケート結果」】
「人手不足倒産」過去最多ペースで増加
帝国データバンクが、2024年上半期における「人手不足倒産」の件数を公表しました。2023年上半期の110件を大きく上回る182件もの「人手不足倒産」が発生しており、過去最多ペースで推移しています。
※「人手不足倒産」とは、法的整理(倒産)となった企業のうち、従業員の離職や採用難等により人手を確保できなかったことが要因となった倒産のことをいいます。
◆倒産件数の8割が「従業員10人未満」
2024年上半期における「人手不足倒産」182件のうち、「従業員10人未満」の小規模事業者の割合は8割を占めています。厚生労働省の労働力調査(2024年5月)によれば、就業者数は22カ月連続で増加しており、人手不足感は落ち着きつつあるものの、1人の退職者が与えるダメージが大きい小規模事業者では、依然として「人手不足倒産」に追い込まれる可能性は高いと予測されています。
◆「2024年問題」の影響も
物流業や建設業においては、働き方改革関連法による時間外労働の上限規制が2024 年4月から適用されたことによる人手不足(いわゆる「2024年問題」)の影響があり、倒産件数は、建設業で53件、物流業で27件となっており、どちらも年上半期としては過去最多でした。特に物流業では、時間外労働上限規制や改善基準告示が改正されたことにより、2023年上半期の15件と比較してほぼ倍増となっています。
1人が退職すると、残された社員でその穴を埋めることとなり、負荷に耐えきれずドミノ倒し型に退職が連鎖するケースも多いようです。採用の強化や、労働条件の改善による離職防止など、自社にあった人手不足対策を検討しましょう。
【帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2024年上半期)」】
個人情報保護をめぐる動向等
近年における急速なIT化・デジタル化は、PCシステムやクラウドを用いた情報の一元管理・利活用を可能にし、社会全体に大きな変革をもたらしました。一方で、このような状況は、個人情報をめぐる様々な事案を引き起こし、国内外で問題となっています。こうした昨今の状況や、個人情報保護法改正の動向について知っておくことが重要です。
◆個人情報をめぐる事案の発生
個人情報をめぐる事案は日々発生しており、報道等で目にする機会も多いかと思われます。個人情報保護委員会は、令和5年度年次報告において、漏えい等事案に関する報告の処理件数(法令上報告が義務付けられているもの)が、12,120件(令和4年度:7,685件)であったと公表しています。
一般的に、個人情報をめぐる事案はおもに、ミス・故意等によるものと、サイバー攻撃等によるものとに大別されます。前者については、メールの誤送信や個人情報の誤配布、クラウドの設定ミス、情報端末の紛失、顧客情報の不正利用などが挙げられます。後者は、不正アクセス等によるもので、最近はとくに「ランサムウェア」による被害が話題になっています。
◆ランサムウェア被害の深刻化
ランサムウェアとは、不正アクセスによりPC上のデータ等に感染させて暗号化し、その暗号化したデータの復元等と引き換えに対価を要求する不正ソフトウェアです。直近では、大手出版社が被害にあった事案などが話題となりました。一方、大手企業に限らず、地方の中小企業等も標的となった事案もあるなど、誰もがその脅威の対象となり得ます。攻撃手法は日々進化しており、予測が難しい状況ではありますが、セキュリティソフトの導入や適切なアップデートの実施、重要データのバックアップ、社内におけるセキュリティ意識の醸成や事案の共有などを行うことが有用です。
◆個人情報保護法の改正
個人情報をめぐる法制度の改正も知っておきたい事項です。個人情報保護法は平成15年に成立し、平成17年4月に施行され、その後改正を重ねてきました。平成27年の法改正後、「いわゆる3年ごと見直し規定」に基づき改正を進め、同規定に基づく初の改正となった令和2年改正では、「漏えい等が発生し、個人の権利利益を害するおそれがある場合」に、「個人情報保護委員会への報告と本人への通知」が事業者に義務付けられることとなりました。
次の改正に向け、同委員会は6月27日、検討の中間整理を公表しました。前述の令和2年改正における報告義務化が事業者にとって負担となっている課題等について検討するとしています。
【個人情報保護委員会「「個人情報保護法 いわゆる3年ごと見直しに係る検討の中間整理」の公表及び同整理に対する意見募集(令和6年6月27日)」】
合理的配慮で実際に問題になるのはどんな点?
◆合理的配慮とは
合理的配慮とは、障害のある社員が職場で平等に働けるよう、個々の状況に応じて行う調整や支援のことです。具体的には、業務内容の調整、勤務時間の柔軟化、物理的環境の改善、コミュニケーション手段の提供などが挙げられます。
雇用分野における障害者の差別禁止・合理的配慮の提供義務として、すべての企業に取組みが課されています。これらは障害者と会社側が話し合いを重ね、双方にとって過度な負担とならない範囲で実施されます。
◆ハードよりもソフトが問題?
では実際に、どのような合理的配慮が課題となっているのでしょうか? 厚生労働省がまとめた、都道府県労働局やハローワークへ持ち込まれた合理的配慮に関する相談の内訳を相談の多かった順にみると、次のようになっています。
1 上司・同僚の障害理解に関するもの 26.1%
2 相談体制の整備、コミュニケーションに関するもの 18.0%
3 業務内容・業務量に関するもの 13.9%
4 作業負担や移動負担に関するもの 11.8%
5 就業場所・職場環境に関するもの 11.0%
6 業務指示・作業手順に関するもの 9.8%
このようにみると、作業場所の改修などのハードより、障害への理解やコミュニケーションといったソフト面での対応が、より課題となっているようです。対話が重要ですね。
◆win-winな職場を目指して
合理的配慮の提供義務が履行されていない場合は、事業主に対し、行政から助言、指導または勧告が行われることがあります。
合理的配慮は、障害者の能力を最大限に発揮できる環境を整えることが目的です。会社の力になってもらうためには、障害のある社員との行き違いをなくし、win-winな職場を目指したいですね。
【厚生労働省「雇用の分野における障害者の差別禁止・合理的配慮の提供義務に係る相談等実績(令和5年度)」】
企業のカスタマーハラスメント対策
顧客が企業やその従業員に対して行う不当な要求や迷惑行為(カスハラ)は、業務への支障はもちろん、従業員のパフォーマンスや健康状態等にも影響するため、対策が必要です。厚生労働省・あかるい職場応援団の「職場におけるハラスメント対策(カスタマーハラスメント対策)」の研修動画資料(令和6年6月11日改訂)が参考となるので、以下で紹介します。
◆カスハラに該当する行為、判断基準、対応例
この資料では、具体的な該当行為として、①長時間拘束型、②リピート型、③暴言型、④暴力型、⑤威嚇・脅迫型、⑥権威型、⑦店舗外拘束型、⑧SNS/インターネット上での誹謗中傷型、⑨セクシュアルハラスメント型の9つが挙げられており、それぞれ、「該当行為例」「判断基準例」「対応方針・対応例」「該当する可能性のある刑法犯」について示されています。
例えば、長時間拘束型については、「居座り、長時間の電話など、顧客が正当な理由なく長時間従業員を拘束する」(該当行為例)、「商品・サービスに問題がない場合、約30分を目途に判断する」など(判断基準例)、「上位者に代わる(電話応対時、来店時)」など(対応方針・対応例)、「監禁罪刑法220条(3年以上7年以下の懲役)・一定の場所から移動の自由を奪う行為」など(該当する可能性のある刑法犯)としています。
◆カスハラ対策の基本的な枠組み(事前準備・事後対応)
ハラスメント行為を想定した事前準備として、事業主の基本方針・基本姿勢の明確化→従業員への周知・啓発→従業員(被害者)のための相談対応体制の整備→対応方法、手順の策定→社内対応ルールの従業員等への教育・研修を行う、としています。
また、ハラスメント行為が実際に起こった際の対応として、事実関係の正確な確認と事案への対応→従業員への配慮の措置→再発防止のための取組み→前記までの措置と併せて、プライバシー保護や不利益取扱いされないことなどの措置を講じる、としています。
【厚生労働省・あかるい職場応援団「職場におけるハラスメント対策(カスタマーハラスメント対策)」】
公的年金 令和6年財政検証の結果が公表されました
財政検証は「年金の健康診断」ともいわれ、5年に一度、今後100年間の年金財政がもつかをチェックするものです。
◆給付水準の調整終了年度と最終的な所得代替率の見通し
会社員の夫と専業主婦世帯のいわゆる「モデル年金」は、今年度は月額22万6,000円で、現役世代の男性の平均手取り収入37万円に対する割合(所得代替率)は、61.2%です。なお、所得代替率は、法律で50%を下回らないことが約束されています。
今の年金制度は、将来に備えて、給付水準を物価や賃金の上昇率よりも低く調整する「マクロ経済スライド」が行われていますが、4つの経済前提ケースで、調整終了年度と所得代替率は以下のとおりとなりました。
(1) 高成長実現ケース(経済成長率1.6%、賃金上昇率2.0%)
→2039年度に調整終了。所得代替率56.9%。
(2) 成長型経済移行・継続ケース(経済成長率1.1%、賃金上昇率1.5%)
→終了年度2037年度。所得代替率57.6%
(3) 過去30年投影ケース(経済成長率▲0.1%、賃金上昇率0.5%)
→終了年度2057年度。所得代替率50.4%
(4) 1人当たりゼロ成長ケース(経済成長率▲0.7%、賃金上昇率0.1%)
→2059年度に国民年金の積立金がなくなって 所得代替率が50.1%となり、その後、37%から33%程度まで下がる
私たちにとって近年の実感に近いケースは(3)ですが、その場合の所得代替率は50.4%と、政府目標をぎりぎり上回る結果となりました。
◆オプション試算
そのほか、次のようなオプション試算も行われています。(1)被用者保険の更なる適用拡大を行った場合、(2)基礎年金の拠出期間延長・給付増額を行った場合、(3)マクロ経済スライドの調整期間の一致を行った場合、(4)65歳以上の在職老齢年金の仕組みを撤廃した場合、(5)標準報酬月額の上限の見直しを行った場合、の5つのケースについて、それぞれ4つの経済前提の下で試算が行われました。これらが来年の年金制度改正案に盛り込まれる可能性があります。なお、厚生労働省は、(2)の基礎年金の拠出期間延長・給付増額の導入は見送るとしています。
中小企業における労務費等の価格転嫁の現状~中小企業庁「価格交渉促進月間(2024年3月)のフォローアップ調査結果」より
原材料費やエネルギー価格、労務費などが上昇する中、中小企業庁では、2021年9月より毎年3月と9月を「価格交渉促進月間」と設定し、受注企業が、発注企業にどの程度価格交渉・価格転嫁できたかを把握するための調査を実施しています。
6月21日に公表された2024年3月のフォローアップ調査の結果では、労務費に関する価格交渉の状況や、正当な理由のない原価低減要請等による減額についても初めて調査が行われました。
◆価格交渉の状況
直近6カ月間における価格交渉の状況は、「価格交渉が行われた」割合は59.4%で、発注企業から交渉の申し入れがあり、価格交渉が行われた割合が増加するなど、価格交渉できる雰囲気がさらに醸成されつつある傾向です。
一方で、「価格交渉を希望したが、交渉が行われなかった」割合は10.3%で前回より増加しており、引き続き労務費指針の徹底等による価格交渉の機運醸成が必要です。
◆価格転嫁の状況
コスト全体の価格転嫁率は46.1%で、昨年9月より微増しています。受注企業のうち、コスト増加分を全額価格転嫁できた割合は増加し、一部でも価格転嫁できた割合も増加しました。しかし、一方で1~3割しか価格転嫁できなかった割合も増加。まったく価格転嫁できなかった・減額された企業も約2割、「転嫁できた企業」と「できない企業」で二極化の兆しもあり、転嫁対策の徹底が重要です。
◆「労務費についての価格交渉」と「正当な理由のない原価低減要請等による減額」
今回、①「労務費について、価格交渉できたか」と、②「正当な理由のない原価低減要請等により価格転嫁できず、結果、代金が減額となったケース」を初めて調査。①については、価格交渉が行われた企業のうち約7割が、労務費についても価格交渉が実施されたと回答しました。②の「正当な理由のない原価低減要請等によって価格転嫁できず、減額されたケース」は、全体の約1%存在しました。
下請法違反が疑われる事例や、「原価低減要請」に係る振興基準上不適切と思われる事例も存在しており、中小企業庁ではこれらの情報も端緒として、下請法の執行を強化していくとしています。
【中小企業庁「価格交渉促進月間(2024年3月)フォローアップ調査結果」】
改正入管法等が成立 「育成就労制度」とは?
6月14日に出入国管理及び難民認定法(出入国管理法)の改正案が参議院で可決・成立し、1993年に始まった技能実習制度は廃止され、新たに育成就労制度が創設されることになりました。変更となる点についてまとめておきます。
◆育成就労制度の特徴
・目的は、技能実習制度は技能の移転による国際貢献のための人材育成などであることに対し、育成就労制度では日本の発展のための人材育成と人材確保としています。
・在留期間は、技能実習制度では最大で通算5年でしたが、育成就労制度では原則3年となります。また、育成就労制度では転籍が可能になります。ただし、同一機関での就労が1~2年(分野によって異なる)を超えている場合や、技能検定試験基礎級等及び一定水準以上の日本語能力に係る試験への合格などが条件となります。
・受入れ対象職種・分野は、特定技能1号水準の人材を育成するため、特定技能と同様の16業種(介護、ビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設、造船・船用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、自動車運送業、鉄道、林業、木材産業)となります。技能実習制度では90職種(165作業)での実習が可能でした。
・悪質なブローカー対策として、不法就労させた場合の罪が厳罰化されます。また、当分の間、民間職業紹介事業者の関与は認めない方針です。
・技能実習の監理団体が「監理支援機関」に名称変更となり、受け入れ機関の要件を適正化し、適切な受入れ・育成を実現するとしています。
◆制度の開始時期は?
育成就労制度は、公布から3年後の2027年から開始され、2030年までが移行期間となる見込みです。
8月の税務と労務の手続[提出先・納付先]
13日
- 源泉徴収税額・住民税特別徴収税額の納付[郵便局または銀行]
- 雇用保険被保険者資格取得届の提出<前月以降に採用した労働者がいる場合>
[公共職業安定所]
9月1日
- 個人事業税の納付<第1期分>[郵便局または銀行]
- 個人の道府県民税・市町村民税の納付<第2期分>[郵便局または銀行]
- 健保・厚年保険料の納付[郵便局または銀行]
- 健康保険印紙受払等報告書の提出[年金事務所]
- 労働保険印紙保険料納付・納付計器使用状況報告書の提出
[公共職業安定所]
- 外国人雇用状況の届出(雇用保険の被保険者でない場合)<雇入れ・離職の翌月末日>
[公共職業安定所]